MLBドラフト全体1位指名選手
MLBドラフト全体1位指名選手(MLBドラフトぜんたい1いしめいせんしゅ)とは、メジャーリーグベースボール(MLB)のドラフト会議において、会議の最初(全体1位)で名前が読み上げられる選手をさす。会議はネットなどで中継され、読み上げられた選手は報道などにより一躍有名になり、将来のスーパースターとして期待される[1]。
ドラフト会議
MLBドラフト会議 (First-Year Player Draft) は、ルール4ドラフト (Rule 4 Draft) とも呼ばれ、高校、大学、独立リーグなどのアマチュア野球選手を対象にしたMLBの新人選手選択会議である。
- そもそもMLBドラフトは資金力のある球団が契約金額を高騰させ、有望な選手を独占するのを防ぐため、1965年から行われている制度[2]。
- ドラフト会議 (MLB)では、一度に100人以上も指名する球団もある。
ドラフト指名順位は、前年のチーム成績によって決まる。 最も成績の悪いチームが最初に指名できる。前年のシーズン終了後にフリーエージェント(FA)で選手が移籍した場合、補償としてドラフト指名権が譲渡される場合がある[3]。
なお、MLBはNFLやNBAと異なり、ドラフト指名選手のトレードは認められていない[4]。日本野球機構のドラフト会議では完全ウェーバー方式ではないため、全体1位指名選手は発生し得ない。
歴史
1965年
初の全体1位指名選手は、1965年にカンザスシティ・アスレチックスから指名されたリック・マンデイである。当時としては破格の10万4000ドルの契約金で入団し、MLB通算1619安打・241本塁打の成績を残した。シカゴ・カブス在籍時代の1976年にはドジャー・スタジアムのグラウンド内に乱入し、星条旗を燃やそうとした2人のファンからその星条旗を奪い取ったことで国民的英雄になった[1]。
1971年
1971年の高校3年時に捕手でシカゴ・ホワイトソックスから全体1位指名を受けたダニー・グッドウィンは契約条件が悪いためにプロ入りを拒否した。その4年後の1975年の大学4年時に今度はカリフォルニア・エンゼルスから指名されてプロ入り。スカウト達から「ジョニー・ベンチの再来」と高く評価されていた[1]。ところが、MLBでは主に指名打者として通算で252試合に出場したのみで、捕手としては出場機会が全く無かった。150安打(打率は.236)・13本塁打・OPS.678と全くの期待外れに終わった。現役最終年には日本の南海ホークスでプレーしている。
1973年
1973年にテキサス・レンジャーズから全体1位指名を受けたデビッド・クライドは地元テキサス州の高校時代に大旋風を巻き起こした。高校3年の時は防御率0.18・18勝0敗・148回を投げて328奪三振という驚異的な成績を残した。1973年6月27日に18歳の左腕がいきなり先発投手でMLBデビュー。1972年にチームが首都ワシントンD.C.から本拠地を移転させて以来、初めてチケットが完売。デビュー戦は5回1安打に抑える好投で勝利投手になった。しかし、その後は肩の故障に悩まされて、MLB通算18勝33敗という成績しか残せず、ユニフォームを脱いだ[1]。
該当選手の成績
- 26選手がオールスターゲームに選出された。
- そのうちボブ・ホーナーとダリル・ストロベリーとブライス・ハーパー、カルロス・コレアの4選手は新人王にも選出されている。
- シーズンMVPに選出されたのはジェフ・バロウズとケン・グリフィー・ジュニアとチッパー・ジョーンズとアレックス・ロドリゲスとジョシュ・ハミルトンとジョー・マウアー、ブライス・ハーパーの7選手で、サイ・ヤング賞を受賞したのはデビッド・プライスのみである。
- 全体1位指名された選手として全米野球記者協会の投票によりアメリカ野球殿堂入りした選手は、ケン・グリフィー・ジュニア(2016年)とチッパー・ジョーンズ(2018年)とジョー・マウアー(2024年)の3人。ベテランズ委員会の選考によって殿堂入りした選手にはハロルド・ベインズ(2019年)がいる。
- スティーブ・チルコット、ブリエン・テイラーの2人は、一度もMLBに昇格出来ずに引退している。テイラーはトリプルAにも昇格できなかった。
- マーク・アペルはメジャー昇格前に一度引退・休養したが、現役復帰後に初昇格を果たした。30歳349日でのメジャーデビューは全体1位指名選手の最年長記録となる。また、アペル以前の最年長記録保持者だったマット・ブッシュは素行不良や矯正施設への収監もあり、ドラフトから12年後にメジャーデビューをしている。
- ダニー・グッドウィン、ティム・ベルチャー、ブレイディ・エイケンの3人は全体1位指名を受けた年には契約合意に至らず、後年のドラフトでの指名からプロ入りしている。MLBではこれまでに全体1位指名からプロ入り自体を拒否した選手はいない。
権利の行使
2020年までに行われた過去56度のドラフトでは、30チームのうち22チームは前身球団時代を含めて少なくとも一回は全体1位指名を行っている。
- 以下の各チームは2024年時点で全体1位指名の権利を得たことが無い。
全体1位指名選手
- 注釈
アメリカ野球殿堂入り | * | オールスター選出 | |
៛ | 新人王とオールスター選出 | # | MLBに昇格することなく引退 |
° | 契約未成立 | 太字 | 現役選手 |
年度 | 選手 | 球団 | 守備位置 | 学校 |
---|---|---|---|---|
1965 | リック・マンデイ * | カンザスシティ・アスレチックス | 7 外野手 | アリゾナ州立大学 |
1966 | スティーブ・チルコット # | ニューヨーク・メッツ | 2 捕手 | アンテロープ・バレー高等学校(英語版) |
1967 | ロン・ブロムバーグ(英語版) | ニューヨーク・ヤンキース | 3 一塁手 | ドルイドヒルズ高等学校(英語版) |
1968 | ティム・フォーリ(英語版) | ニューヨーク・メッツ | 6 遊撃手 | ノートルダム高等学校(英語版) |
1969 | ジェフ・バロウズ * | ワシントン・セネターズ | 7 外野手 | ウッドロウ・ウィルソン・クラシカル高等学校(英語版) |
1970 | マイク・アイビー(英語版) | サンディエゴ・パドレス | 2 捕手 | ウォーカー高等学校(英語版) |
1971 | ダニー・グッドウィン ° | シカゴ・ホワイトソックス | 2 捕手 | ピオリア高等学校(英語版) |
1972 | デーブ・ロバーツ(英語版) | サンディエゴ・パドレス | 5 三塁手 | オレゴン大学 |
1973 | デビッド・クライド | テキサス・レンジャーズ | 1 投手 | ウェストチェスター国際学院(英語版) |
1974 | ビル・アーモン(英語版) | サンディエゴ・パドレス | 6 遊撃手 | ブラウン大学 |
1975 | ダニー・グッドウィン | カリフォルニア・エンゼルス | 2 捕手 | サザン大学(英語版) |
1976 | フロイド・バニスター * | ヒューストン・アストロズ | 1 投手 | アリゾナ州立大学 |
1977 | ハロルド・ベインズ * | シカゴ・ホワイトソックス | 7 外野手 | セント・マイケルズ高等学校(英語版) |
1978 | ボブ・ホーナー ៛ | アトランタ・ブレーブス | 5 三塁手 | アリゾナ州立大学 |
1979 | アル・チェインバーズ | シアトル・マリナーズ | 7 外野手 | ジョン・ハリス高等学校 |
1980 | ダリル・ストロベリー ៛ | ニューヨーク・メッツ | 7 外野手 | クレンショウ高等学校(英語版) |
1981 | マイク・ムーア * | シアトル・マリナーズ | 1 投手 | オーラル・ロバーツ大学(英語版) |
1982 | ショーン・ダンストン * | シカゴ・カブス | 6 遊撃手 | トーマス・ジェファーソン高等学校 |
1983 | ティム・ベルチャー ° | ミネソタ・ツインズ | 1 投手 | マウント・バーノン・ナザレン大学(英語版) |
1984 | ショーン・エイブナー | ニューヨーク・メッツ | 7 外野手 | メカニクスバーグ高等学校(英語版) |
1985 | B.J.サーホフ * | ミルウォーキー・ブルワーズ | 2 捕手 | ノースカロライナ大学チャペルヒル校 |
1986 | ジェフ・キング | ピッツバーグ・パイレーツ | 5 三塁手 | アーカンソー大学 |
1987 | ケン・グリフィーJr. * | シアトル・マリナーズ | 7 外野手 | モーラー高等学校(英語版) |
1988 | アンディ・ベネス * | サンディエゴ・パドレス | 1 投手 | エバンズビル大学(英語版) |
1989 | ベン・マクドナルド | ボルチモア・オリオールズ | 1 投手 | ルイジアナ州立大学 |
1990 | チッパー・ジョーンズ * | アトランタ・ブレーブス | 6 遊撃手 | ボールズ・スクール(英語版) |
1991 | ブリエン・テイラー # | ニューヨーク・ヤンキース | 1 投手 | イースト・カータレット高等学校 |
1992 | フィル・ネビン * | ヒューストン・アストロズ | 5 三塁手 | カリフォルニア州立大学フラトン校 |
1993 | アレックス・ロドリゲス * | シアトル・マリナーズ | 6 遊撃手 | ウェストミンスター・クリスチャン高等学校(英語版) |
1994 | ポール・ウィルソン | ニューヨーク・メッツ | 1 投手 | フロリダ州立大学 |
1995 | ダリン・アースタッド * | カリフォルニア・エンゼルス | 7 外野手 | ネブラスカ大学リンカーン校 |
1996 | クリス・ベンソン | ピッツバーグ・パイレーツ | 1 投手 | クレムゾン大学 |
1997 | マット・アンダーソン | デトロイト・タイガース | 1 投手 | ライス大学 |
1998 | パット・バレル | フィラデルフィア・フィリーズ | 5 三塁手 | マイアミ大学 |
1999 | ジョシュ・ハミルトン * | タンパベイ・デビルレイズ | 7 外野手 | アセンス・ドライブ高等学校(英語版) |
2000 | エイドリアン・ゴンザレス * | フロリダ・マーリンズ | 3 一塁手 | イーストレイク高等学校(英語版) |
2001 | ジョー・マウアー * | ミネソタ・ツインズ | 2 捕手 | クレティン・ダーラム高等学校(英語版) |
2002 | ブライアン・バリントン | ピッツバーグ・パイレーツ | 1 投手 | ボールステイト大学 |
2003 | デルモン・ヤング | タンパベイ・デビルレイズ | 7 外野手 | アドルフ・カマリロ高等学校(英語版) |
2004 | マット・ブッシュ | サンディエゴ・パドレス | 6 遊撃手 | ミッション・ベイ高等学校(英語版) |
2005 | ジャスティン・アップトン * | アリゾナ・ダイヤモンドバックス | 6 遊撃手 | グレート・ブリッジ高等学校(英語版) |
2006 | ルーク・ホッチェバー | カンザスシティ・ロイヤルズ | 1 投手 | フォートワース・キャッツ |
2007 | デビッド・プライス * | タンパベイ・デビルレイズ | 1 投手 | ヴァンダービルト大学 |
2008 | ティム・ベッカム | タンパベイ・レイズ | 6 遊撃手 | グリフィン高等学校 |
2009 | スティーブン・ストラスバーグ * | ワシントン・ナショナルズ | 1 投手 | サンディエゴ州立大学 |
2010 | ブライス・ハーパー ៛ | ワシントン・ナショナルズ | 7 外野手 | サザン・ネバダ大学(英語版) |
2011 | ゲリット・コール * | ピッツバーグ・パイレーツ | 1 投手 | カリフォルニア大学ロサンゼルス校 |
2012 | カルロス・コレア ៛ | ヒューストン・アストロズ | 6 遊撃手 | プエルトリコ野球アカデミー(英語版) |
2013 | マーク・アペル | ヒューストン・アストロズ | 1 投手 | スタンフォード大学 |
2014 | ブレイディ・エイケン ° | ヒューストン・アストロズ | 1 投手 | カテドラル・カソリック高等学校(英語版) |
2015 | ダンズビー・スワンソン * | アリゾナ・ダイヤモンドバックス | 6 遊撃手 | ヴァンダービルト大学 |
2016 | ミッキー・モニアック | フィラデルフィア・フィリーズ | 7 外野手 | ラコスタ・キャニオン高等学校(英語版) |
2017 | ロイス・ルイス | ミネソタ・ツインズ | 6 遊撃手 | JSerra Catholic High School |
2018 | ケイシー・マイズ | デトロイト・タイガース | 1 投手 | オーバーン大学 |
2019 | アドリー・ラッチマン * | ボルチモア・オリオールズ | 1 捕手 | オレゴン州立大学 |
2020 | スペンサー・トーケルソン | デトロイト・タイガース | 1 三塁手 | アリゾナ州立大学 |
2021 | ヘンリー・デービス | ピッツバーグ・パイレーツ | 1 捕手 | ルイビル大学 |
2022 | ジャクソン・ホリデイ | ボルチモア・オリオールズ | 1 遊撃手 | スティルウォーター高等学校(英語版) |
2023 | ポール・スキーンズ | ピッツバーグ・パイレーツ | 1 投手 | ルイジアナ州立大学 |
脚注
関連項目
- ドラフト会議 (MLB)
- NFLドラフト全体1位指名選手 - NFLドラフトの全体1位指名選手
- NBAドラフト全体1位指名選手 - NBAドラフトの全体1位指名選手
- NHLドラフト全体1位指名選手(英語版) - NHLドラフトの全体1位指名選手
- MLSドラフト全体1位指名選手(英語版) - MLSドラフトの全体1位指名選手
外部リンク
- Baseball Draft:First overall picks in the June Draft
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