雪之丞変化

雪之丞変化』(ゆきのじょう へんげ)は、1934年昭和10年)から翌年にかけて『朝日新聞』に連載された三上於菟吉時代小説。これを原作とした多くの映画テレビドラマ舞台新作歌舞伎宝塚歌劇などが製作されている。

『雪之丞変化』(1935)

解説

本作は三上於菟吉がジョンストン・マッカレーの『双生児の復讐』を下敷きに、歌舞伎『白浪五人男』の弁天小僧や『三人吉三』のお嬢吉三などからヒントを得て創作したものである。普段はある姿の主人公が、時にまったく別の姿を見せ、最後にその実体を敵に現す、という変身の構図は、後代の『多羅尾伴内』や『キューティハニー』などに連なる「変化ヒーロー物」の先駆けとなった。

なお、本書は1995年に上下巻で講談社文庫・大衆文学館で復刻されたが、以後はまた絶版になっている。

あらすじ

悪党に踏みにじられ狂死した父親。亡くなる前に幼い我が子を抱き寄せ、お前の中に恨みを封じ込め必ず復讐を果たすと言い残すと血を吐いて死ぬ。成長して人気役者になった子は、父の呪いと狂気に苛まれながら標的を狙う。

長崎の大店の主人の子・雪太郎は、父親はじめ家族一同を、あらぬ抜け荷の濡れ衣を着せられ破滅させられる。孤児となった雪太郎は場末役者の中村菊之丞に拾われ、やがて女形看板役者・中村雪之丞となって江戸に現れるが、そのもう一つの顔は親の敵を討つべく剣術を磨きあげた復讐の鬼だった。狙うは今や我が世の春を謳う元長崎奉行・土部三斎とその一味。義賊・闇太郎の助けをうけて、「長崎の敵を江戸で討つ[1]」波乱万丈の物語が繰り広げられる。

映画

雪之丞変化(3部作、1935年-1936年)

  • 雪之丞変化 第一篇(1935年)
  • 雪之丞変化 第二篇(1935年)
  • 雪之丞変化 解決篇(1936年)
雪之丞変化
監督 衣笠貞之助
脚本 伊藤大輔
出演者 林長二郎(長谷川一夫)
六代目嵐徳三郎
高堂国典
製作会社 松竹キネマ
公開 1935年6月27日
上映時間 97分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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キャスト

雪之丞役の長谷川一夫
  • 中村雪之丞・闇太郎・母親:林長二郎(長谷川一夫)
  • 中村菊之丞:六代目嵐徳三郎
  • 土部三斎:高堂国典
  • お初:伏見直江
  • 浪路:千早晶子
  • 浪路の乳母:高松栄子
  • 脇田一松斎:藤野秀夫
  • 廣海屋興平:志賀靖郎
  • 孤軒 目明し佐助:坪井哲(解決篇)
  • 長崎屋三郎兵衛、秋葉の光: 高松錦之助(解決篇)
  • 役人 大久保:結城一郎
  • 代官 濱川:南光明
  • 浪人 立花:沢井三郎
  • ムク犬:永井柳太郎
  • 門倉平馬、先棒の丑: 山路義人(解決篇)
  • 甚太郎:風間宗六
  • 留吉:広田昴
  • 横山:日下部龍馬
  • 後棒の為:小川時次
  • ならずの新:保瀬英二郎
  • おもと:葵令子
  • 千世:摩耶るみえ
  • おさん婆:中川芳江
  • 島抜け法印:原健作(解決篇)

スタッフ

雪之丞変化 闇太郎懺悔(1939年)

キャスト

  • 中村雪之丞・闇太郎:坂東好太郎
  • 妹 三千代:北見礼子
  • 高見沢主膳:海江田譲二
  • 妾 お市:伏見直江
  • 兼水逸当太:山路義人
  • 諸住慶佐:高松錦之助
  • 娘 八重:伏見信子
  • 目明し 金兵衛:坪井哲
  • 海老床老人:関操
  • かき舟の仲居:鏡淳子

スタッフ

雪之丞変化(3部作、1954年)

『雪之丞変化  復讐の剣』(1954年)
  • 雪之丞変化 復讐の恋(1954年)
  • 雪之丞変化 復讐の舞(1954年)
  • 雪之丞変化 復讐の剣(1954年)

キャスト

スタッフ

ひばりの三役 競艶雪之丞変化(前後編、1957年)

  • ひばりの三役 競艶雪之丞変化 (1957年、前編)
  • ひばりの三役 続競艶雪之丞変化 (1957年、後編)

概要

ふり袖捕物帖 若衆変化』のように主演の美空ひばりが二役、三役を演じる作品は人気があった。

原典では、女形である中村雪之丞、怪盗である闇太郎、劇中の回想シーンで登場する雪之丞の母・お園の三役を美空ひばりが演じるが、本作では、更に捻りが加えられ、「雪之丞は実は女であった」という設定になっている。「見かけは男だが実は女」という難しい演技を美空ひばりは演じており、映画評論家の浦崎浩實は本作を「ひばり映画最大級のヒット作」と評している[2]

キャスト

スタッフ

雪之丞変化(1959年)

キャスト

スタッフ

マキノ雅弘監督作品
戦前
1940年代
1950年代
1960年代
1970年代以降

雪之丞変化(1963年)

製作

長谷川一夫300本記念映画。1963年1月13日公開。併映『黒の報告書』。大映の社長だった永田雅一が、市川崑監督と社長室で俳優談義をした際、看板スターである長谷川を使い切れていないと苦言する市川に、ならば長谷川の映画企画を考えろと永田が反論し、反射的に『雪之丞変化』 (1935−36)のリメイクが例示されたことで、永田がその場で長谷川宅に直電、長谷川が快諾したため、急遽、製作が決定された。当初は原作から脚本を作ろうとしたが上手く行かず、原作を連載した朝日新聞に掲載された岩田専太郎の挿絵をイメージ参考に執筆された。但し、雪之丞と波路の濡れ場の1シーンのみ、台詞がオリジナル版から引用されており、伊藤大輔と衣笠貞之助がクレジット併記されている。

撮影は大映京都で行われたが、当時の長谷川にはお抱えの専属スタッフがいて、監督とスタッフの起用を巡って衝突することも珍しくなかったが、市川は、敢えて長谷川サイドの反対を押し切って、大映東京からカメラマンの小林節雄を連れて撮影に臨んだ。ただ、衣装に関しては、長谷川の理詰めで計算された誂え方に感心し、一任している。

撮影当初は、照明のライティングを巡って、市川と長谷川の間で意見の相違が起こったが、試写会を見た長谷川が、自身の映り具合に満足して以降はスムーズに進んだ。むしろB班を立てての小物撮影にリテイク箇所が散見し、市川自身が長谷川を交えて多数を撮り直している。また、それ以前はあまり表現されなかった刀が空を切る音を挿入したり、地面に水や墨汁を撒いて画面を全て暗幕の黒に統一した画面設計をするなど、実験的な試みも多く採り入れられており、市川は「僕自身、そうとう楽しみました」と後年語っている[3]

キャスト

スタッフ

受賞

  • 毎日映画コンクール美術賞
  • NHK映画賞ベストテン第3位
1947 - 1949年
1950年代
1960年代
1970年代
  • 愛ふたたび(1971年)
  • 時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日(「最も速く」)(1973年)
  • 股旅(1973年)
  • 吾輩は猫である(1975年)
  • 妻と女の間(1976年)
  • 犬神家の一族(1976年)
  • 悪魔の手毬唄(1977年)
  • 獄門島(1977年)
  • 女王蜂(1978年)
  • 火の鳥(1978年)
  • 病院坂の首縊りの家(1979年)
1980年代
  • 古都(1980年)
  • 幸福(1981年)
  • 細雪(1983年)
  • おはん(1984年)
  • ビルマの竪琴(1985年)
  • 鹿鳴館(1986年)
  • 映画女優(1987年)
  • 竹取物語(1987年)
  • つる -鶴-(1988年)
1990年代
  • 天河伝説殺人事件(1991年)
  • 帰って来た木枯し紋次郎(1993年)
  • 四十七人の刺客(1994年)
  • 八つ墓村(1996年)
2000年代
企画・監修作品
  • 銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)(1979年)
  • 長江(1981年)
  • 子猫物語(1986年)
テレビドラマ
関連人物・項目

テレビドラマ

雪之丞変化(1959年)

1959年4月2日から6月25日までNETテレビ(現・テレビ朝日)とその系列局で放送。全13話。第10話までは毎週木曜 19時00分 - 19時30分に、第11話からは毎週木曜 19時30分 - 20時00分に編成のサンウエーブ工業提供枠『サンウエーブ名作座』で放送された。

キャスト

  • 雪之丞、闇太郎:江畑絢子
  • 丹波哲郎
  • 深川きよみ
  • 坂東寿之助
  • 沢田清

スタッフ

NETテレビ 木曜 19:00 - 19:30
前番組 番組名 次番組
あすへ開く窓
雪之丞変化
(1959年4月2日 - 6月4日)
良寛さまと子供たち
NETテレビ 木曜 19:30 - 20:00
夫と妻の記録
雪之丞変化
(1959年6月11日 - 6月25日)
木曜笑劇場

雪之丞変化(1970年)

1970年4月6日から6月29日までフジテレビ系列月曜20時台に放送。全13話。

キャスト

スタッフ

各話リスト

話数 サブタイトル 放送日 脚本 監督 ゲスト
その壱 大江戸初乗り込み 1970年
4月6日
柴英三郎 五社英雄 清左衛門:宮沢元、雪太郎:片桐秀樹、小六:青木義朗、力造:佐藤京一、浮島:阿井美千子、お道の方:藤田みどり、対馬守:市川男女之助、波戸崎徹、星野謙二郎
その弐 闇太郎ざんげ 4月13日 清左衛門:宮沢元、少年闇太郎:松田妙美、大目付:原聖四郎、小六:青木義朗、力造:佐藤京一、浮島:阿井美千子、お道の方:藤田みどり、対馬守:市川男女之助、波戸崎徹、星野謙二郎
その参 竜神が陸に上った 4月20日 大野靖子 深作欣二 浮島:阿井美千子、清左衛門:宮沢元、南里屋:永井智雄、喜楽斎:鈴木瑞穂、小蝶:服部妙子、利七:守田学哉、治作:楠義孝、神官:北原将光、竹造:日高久、松吉:大川淳、孫:梶川武利、三原伝、宮本栄二、佐藤典孝、岩崎純
その四 はぐれ唐人 4月27日 南里屋:永井智雄、喜楽斎:鈴木瑞穂、小蝶:服部妙子、利七:守田学哉、治作:楠義孝、神官:北原将光、竹造:日高久、松尾勝人、佐々木松之丞
その五 芙蓉屋敷の女 5月3日 柴英三郎 松野宏軌 お郁:浦里はるみ、法印:古川ロック、清左衛門:宮沢元、少年闇太郎:松田妙美、浜川:滝田裕介、名倉:伊吹聰太朗、茂十:岩田直二、源助:石浜祐次郎、源太:加賀爪芳和、同心:大木晤郎、松吉:田村保、お兼:井関悦子、酔客:関真太郎、野田:伊達強
その六 夕顔心中 5月10日 志津:赤座美代子、法印:古川ロック、清左衛門:宮沢元、浜川:滝田裕介、名倉:伊吹聰太朗、茂十:岩田直二、源助:石浜祐次郎、源太:加賀爪芳和、同心:大木晤郎、お兼:井関悦子、服部:夏八木勲
その七 札差しの罠 5月17日 大野靖子 森川時久 結城:山本圭、お千代:佐藤オリエ、お芳:浅茅しのぶ、辰五郎:天王寺虎之助、文造:黛康太郎、友吉:金井進二、有明検校:内田朝雄、仙石屋:桑山正一、相良:矢野宣、野崎:可知靖之、三次:前川哲男
その八 三番倉の鍵 5月24日 結城:山本圭、お千代:佐藤オリエ、お芳:浅茅しのぶ、矢野:武内亨、辰五郎:天王寺虎之助、有明検校:内田朝雄、仙石屋:桑山正一
その九 紫の囮 6月1日 柴英三郎、宇留田俊夫 宇留田俊夫 源八:佐藤京一、法印:古川ロック、松寿:伊丹十三、趙元:今福正雄、宇那:新橋耐子、玄蕃:西山辰夫、卍:宍戸大全、鉄泉:佐々木孝丸
その十 琉球哀歌 6月8日 源八:佐藤京一、法印:古川ロック、松寿:伊丹十三、趙元:今福正雄、宇那:新橋耐子、鉄泉:佐々木孝丸
その十一 札差しの罠 6月15日 大野靖子 松野宏軌 横山右京:玉川伊佐男、石子:伊達三郎、田中:出水憲司、片桐:黛康太郎、小田:伊東義高、村上:藤原英昭、仙太:野崎善彦、非人:新田猛
その十二 浪路さすらい 6月22日 横山右京:玉川伊佐男、石子:伊達三郎、田中:出水憲司、片桐:黛康太郎、小田:伊東義高、村上:藤原英昭、仙太:野崎善彦、非人:新田猛、留吉:戸板幸男
その十三 仇討ち雨情 6月29日 森川時久 浮島:阿井美千子、水城:江守徹、お妙:高橋あや子、番頭:新田猛、駕籠屋:林成二郎、同心:波戸崎徹、村上:津々井功二、家臣:星野謙二郎

備考

その五「芙蓉屋敷の女」とその六「夕顔心中」は欠番扱いになっている。2014年の時代劇専門チャンネルにおける再放送では、当初放送予定であったが、都合により未放送となった。さらに話数を全13話から全11話とする措置がとられた。だが、2019年のホームドラマチャンネルにおいては放送された。

フジテレビ系列 月曜 20:00 - 20:56
前番組 番組名 次番組
お嫁にいきたい
(1970年2月2日 - 3月30日)
雪之丞変化
(1970年4月6日 - 6月29日)
新三匹の侍
(1970年7月6日 - 9月28日)
1959年7月 - 1960年8月(第1期)
1959年
1961年1月 - 1963年4月(第2期)
1961年
  • 探偵マイケル
  • チェックメイト
1962年

ガンスモーク

1963年11月 - 1966年9月(第3期)
1963年
1964年
1965年
  • 坊っちゃん(六代目市川染五郎版)
  • 青空にらくがきしよう
  • 大将と王様
1966年
1967年1月 - 4月(第4期)
1967年
1968年5月 - 1971年3月(第5期)
1968年
  • 事件とあいつ
  • 花子ちゃん
1969年
  • もうれつ大家族
  • 若い恋人たち
1970年
1971年
1972年4月 - 1974年9月(第6期)
1972年
1973年
1974年

青い山脈(坂口良子版)

1975年1月 - 1978年3月(第7期)
1975年
1976年
1977年
1979年4月 - 1983年3月(第8期)
1979年
1980年
1981年
1982年
1983年
関連項目
カテゴリカテゴリ

雪之丞変化(2008年)

2008年1月3日(木曜) 21時00分 - 22時45分にNHK総合テレビ正月時代劇として放送。

出演

スタッフ

正月時代劇
放送作品
1990年代
2000年代
2010年代
2020年代
カテゴリ カテゴリ

舞台

  • 1990年 PARCO劇場近鉄劇場「雪之丞変化2001年」
    • 原作:三上 於菟吉 原案:市川猿之助(3代目) 脚本:横内謙介
    • 出演:中村信二郎(雪之丞・ユキヒコ)、市川右近(初代)(闇太郎)、市川猿弥(むく犬タケシ)、市川段治郎(平馬)、市川春猿(2代目)(お初)、市川猿十郎(長崎屋)、市川笑也(浪路・タカミヤ)、坂東弥十郎(三斎・DJ)ほか 喜多村緑郎 (2代目)
  • 2015年 中日劇場「雪之丞変化2001年」
    • 出演:市川猿之助(4代目)(雪之丞・闇太郎)、市川右近(初代)(闇太郎)、中村萬太郎(むく犬タケシ)、坂東巳之助(平馬)、中村米吉(お初)、中村又之助(長崎屋)、中村梅丸(浪路・タカミヤ)、市川男女蔵(6代目)(三斎)ほか
  • 1991年 東京宝塚劇場東宝二月特別公演 喜劇 雪之丞変化」
詳細は「雪之丞変化 (宝塚歌劇)」を参照
  • 2019年 歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」『新版 雪之丞変化』

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ cf, wikt:江戸の敵を長崎で討つ
  2. ^ 小川順子. “チャンバラ映画と大衆演劇の蜜月--美空ひばりが銀幕で果たした役割”. 日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (国際日本文化研究センター) 33 (2006-10): 73-92. NAID 120005681549. 
  3. ^ 『完本 市川崑の映画たち』、2015年11月発行、市川崑・森遊机、洋泉社、P208〜217

関連項目

外部リンク

  • 『雪之丞変化』:新字新仮名(青空文庫
  • 正月時代劇「雪之丞変化」 - NHKドラマ
  • 正月時代劇 雪之丞変化 - NHK放送史
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