運動の第2法則

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古典力学
F = d d t ( m v ) {\displaystyle {\boldsymbol {F}}={\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}(m{\boldsymbol {v}})}
運動の第2法則
歴史(英語版)
分野

静力学  · 動力学 / 物理学における動力学  · 運動学  · 応用力学  · 天体力学  · 連続体力学  · 統計力学

定式化
基本概念

空間 · 時間 · 速度 · 速さ · 質量 · 加速度 · 重力 · 力 · 力積 · トルク / モーメント / 偶力 · 運動量 · 角運動量 · 慣性 · 慣性モーメント · 基準系 · エネルギー · 運動エネルギー · 位置エネルギー · 仕事 · 仮想仕事 · ダランベールの原理

主要項目

剛体 · 運動 · ニュートン力学 · 万有引力 · 運動方程式 · 慣性系 · 非慣性系 · 回転座標系 · 慣性力 · 平面粒子運動力学 · 変位 · 相対速度 · 摩擦 · 単振動 · 調和振動子 · 短周期振動 · 減衰 · 減衰比 · 自転 · 回転 · 円運動 · 非等速円運動 · 向心力 · 遠心力 · 遠心力 (回転座標系) · 反応遠心力 · コリオリの力 · 振り子 · 回転速度 · 角加速度 · 角速度 · 角周波数 · 偏位角度

科学者

ニュートン · ケプラー · ホロックス · オイラー · ダランベール · クレロー · ラグランジュ · ラプラス · ハミルトン · ポアソン

運動の第2法則うんどうのだい2ほうそく: Newton's second law)は、ニュートン力学の基礎をなす三つの運動法則の一つ。

第2法則は運動の第1法則(慣性の法則)が成り立つ基準系(いわゆる座標系)、すなわち慣性系における、物体の運動状態の時間変化と物体に作用する力の関係を示す法則である。

概要

運動の第2法則はアイザック・ニュートンによって発見され、1687年に出版した『自然哲学の数学的諸原理』において発表された。

運動の第2法則から、ニュートン力学における物体の運動方程式ニュートンの方程式)が導かれる。

m a = F . {\displaystyle m{\boldsymbol {a}}={\boldsymbol {F}}.}

ここで、 m {\displaystyle m} は物体の質量 a {\displaystyle {\boldsymbol {a}}} は物体の加速度 F {\displaystyle {\boldsymbol {F}}} は物体に加わる力。

なお、この運動方程式は、ニュートン自身は直接示しておらず、レオンハルト・オイラーによって、1749年の «Recherches sur le mouvement des corps célestes en général»(『天体の運動一般に関する研究』)[1]で初めて公表された。

解説

ニュートンの運動の第2法則は、物体の運動状態の時間変化が、物体に作用する力に比例し、方向が同じになることを主張する。

『自然哲学の数学的諸原理』における第2法則は力の作用する時間が暗黙に含まれており、前述した「運動状態の変化」は運動量の変化、「力」は今日でいう力積に相当する概念になっている。

現代的記法に則して第2法則を記述するなら、ある短い時間 Δt に生じた物体の運動量の変化 Δp は、(現代物理学における意味での)力 F に比例する。

Δ p = F Δ t . {\displaystyle \Delta {\boldsymbol {p}}={\boldsymbol {F}}\Delta t.} [注 1]

この両辺を時間 Δt で割り、運動量 p を時刻 t の関数と見なし Δt → 0極限をとれば、以下の微分方程式が得られる。

d p d t ( t ) = F ( t ) {\displaystyle {\frac {d{\boldsymbol {p}}}{dt}}(t)={\boldsymbol {F}}(t)}

この方程式はニュートンの運動方程式と呼ばれる。

ニュートンはまた、(現代でいうところの)運動量 p を、(慣性)質量 m と速度 v の積として定義している。

p := m v . {\displaystyle {\boldsymbol {p}}:=m{\boldsymbol {v}}.}

従って、上述の運動方程式は速度と質量を用いて以下のように書き直すことができる。

d ( m v ) d t ( t ) = F ( t ) {\displaystyle {\frac {d(m{\boldsymbol {v}})}{dt}}(t)={\boldsymbol {F}}(t)}

また初等的な運動学から、速度 v位置 x時間微分として表すことができるから、運動方程式を x に関する2階の常微分方程式に書き換えることができる。

m d 2 x d t 2 ( t ) = F ( t ) . {\displaystyle m{\frac {d^{2}{\boldsymbol {x}}}{dt^{2}}}(t)={\boldsymbol {F}}(t).}

ここで質量 m定数とした。

速度の時間微分、従って位置の2階の時間微分は加速度と呼ばれる。ニュートンの方程式によれば、物体の加速度はその物体が受ける正味の力に比例し、その比例係数は慣性質量となる。

m a ( t ) = F ( t ) . {\displaystyle m{\boldsymbol {a}}(t)={\boldsymbol {F}}(t).}

この形の方程式を運動方程式と呼ぶこともある。 加速度と力の関係から、ある(既知の)力が働く物体について、その加速度から物体の慣性質量を決定することができる。

相対性理論による修正

ニュートン力学では、時間はあらゆる物体や空間について共通であると暗黙に仮定されていた。しかしながら、自然法則相対性原理に従う(系によらず自然法則は不変)という考えの下では、もはや時間はすべてに共通する絶対的なものではなく、あらゆる系に固有のものとなる。

特殊相対性理論(特殊相対論)では、慣性系における自然法則の不変性が要請される。特殊相対論においては、ニュートンの方程式に現れる時間は絶対的なものではなく、その系の固有時と解釈される。すなわち基準時刻 t を固有時 τ に置き換えたものが(特殊)相対論的運動方程式となる。

d p d τ = G ( τ ) {\displaystyle {\frac {dp}{d\tau }}=G(\tau )}

この運動量 p速度 vdx/dt ではなく、位置の固有時による微分比例する。

p = m d x d τ . {\displaystyle p=m{\frac {dx}{d\tau }}.}

時刻 t は固有時 τ の関数として与えられ、運動量は連鎖律から

p = m d x d t d t d τ = γ m v {\displaystyle p=m{\frac {dx}{dt}}{\frac {dt}{d\tau }}=\gamma mv}

となる。ここで γ は以下のように定義される。

γ = d t d τ = 1 1 v 2 / c 2 . {\displaystyle \gamma ={\frac {dt}{d\tau }}={\frac {1}{\sqrt {1-v^{2}/c^{2}}}}.}

質点の速さが光速より十分小さければ γ → 1 となり、ニュートン力学とほぼ同じ意味を持つ式となる。

注釈

  1. ^ 太字の変数はベクトル量を表す。

出典

  1. ^ Euler 1749, pp. 102–103.

参考文献

  • Euler, Leonhard (1749). “Recherches sur le mouvement des corps célestes en général”. Mémoires de l'académie des sciences de Berlin 3: 93-143. http://eulerarchive.maa.org/pages/E112.html 2017年3月11日閲覧。. 
  • 松田哲『力学』丸善〈パリティ物理学コース〉、1993年、20頁。 
  • 小出昭一郎『力学』岩波書店〈物理テキストシリーズ〉、1997年、18頁。 
  • 原康夫『物理学通論 I』学術図書出版社、2004年、31頁。 

関連項目