虫は死ね

虫は死ね
ジャンル テレビドラマ
脚本 安部公房
演出 小南武朗
出演者 市原悦子
大坂志郎
佐々木すみ江
高津住男
オープニング 林光
エンディング 同上
製作
プロデューサー 本田敬二
制作 北海道放送(HBC)
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1963年11月10日
放送時間日曜日 21:00 - 22:00
放送枠東芝日曜劇場
放送分60分
回数1
テンプレートを表示
ポータル 文学
ポータル 文学

虫は死ね』(むしはしね)は、1963年(昭和38年)11月10日TBS系列東芝日曜劇場」にて放送された単発のテレビドラマ。制作は北海道放送(HBC)。安部公房が脚本を書き、市原悦子が主演を務めた。

撮影は、同年の9月14日から21日まで、羊蹄山の麓の真狩村を中心にオール・ロケーションで行なわれた[1]。全編フィルム収録。

昭和38年度芸術祭奨励賞受賞作品。ドラマ本編の映像は保存されており、横浜市放送ライブラリーにて無料で閲覧することができる。脚本テキストは1964年(昭和39年)、現代芸術協会雑誌「テレビドラマ」に掲載された[1]

あらすじ

ある農家の夫婦の元に、主人の姪の愛子が手伝いにやって来る。愛子は男との別れ話のもつれから気がふれ、果物ナイフで男に切りつけて精神病院に入院していた。田舎にやって来てほっとする愛子は意外にほがらかで、主人は愛子にいたわりの感情を持つが、妻の方はいろいろと事件のことを根掘り葉掘り聞きだそうとする。そのとき、食卓に飛んできたを叩きつぶそうとする妻の手を、愛子は衝動的に強く払いのけ食器類がころがり落ちた。愛子はあやまるが、妻は愛子ばかりを庇う夫にいやな気分になる。

ある日、妻は愛子の掌の血まめの手当てをする夫を見て、徐々に愛子に反感を持つようになる。そんな折、原野にイナゴが大量発生し、対策を講じるために村人や主人が役場に集まった。営林署の技師を呼んでスプレア機で害虫駆除薬を噴霧することとなったが、技師が村にやって来る日、妻は愛子に昼食用としてをしめるよう命じる。鶏をなかなか捕まえられず、道に飛び出した愛子を、ちょうど技師たちを乗せたジープで戻ってきた主人が見つけて一緒に家に連れ帰る。愛子を擁護する主人と妻が険悪になり、愛子は再度鶏しめを試みようと鎌を手に鶏のいる庭に行った。鶏を追う愛子に妻は急ぐよう促し、虫も鳥も殺せないお姫様みたいなきれい事で男をたぶらかすなんて淫売と同じだ、平気で人を殺せる人間の方がそんなふうに猫をかぶっているんだと激しく罵倒し、泥棒猫のくせに虫を殺せないのは、自分が虫だからだ、あんたは害虫なんだよと狂ったようになじった。愛子は耳をふさぎ絶叫する。

技師が薬を噴霧するスプレア機に乗って試しに主人の家に来た。珍しげに機械を見て、乗りたがる愛子と技師が楽しそうに談笑しているのを妻が忌々しげに見、主人もやや技師に嫉妬する。愛子に運転を教える約束をして技師が帰ろうとすると、タイヤがパンクする。見るとタイヤはカミソリで切られていた。妻は愛子を犯人あつかいしはじめ、「人間の命よりも虫の命の方が大事だという気違いがいる」と嫌味を言った。愛子は、「本物の気違いは、自分で自分のことを変だとは自覚できないんですってね……でも、私はまだ自覚できたわ」と言った。技師が困惑する中、愛子を庇う主人と妻が言い合いになり険悪なムードになった。愛子は農家を出て行く決心をし、技師はタイヤを交換したスプレア機で町まで送ろうとするが、主人が、行くんなら一人で行きなさいと言った。愛子は、「私、まだ自分が変だってことを自覚できるわ、でも、すぐにまた、自覚できなくなりそうよ」と言い残して立ち去って行った。妻は、これで昔どおり静かになったと低く呟く。

スタッフ

キャスト

ほか

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 「作品ノート17」(『安部公房全集 17 1962.11-1964.01』)(新潮社、1999年)

参考文献

  • 『安部公房全集17 1962.11-1964.01』(新潮社、1999年)
TBS系 東芝日曜劇場1963年11月10日
前番組 番組名 次番組
カミさんと私
虫は死ね
わたしはもう歌わない
安部公房の作品
小説

終りし道の標べに - デンドロカカリヤ - 夢の逃亡 - 壁 - バベルの塔の狸 - 赤い繭 - 洪水 - 魔法のチョーク - 事業- 飢えた皮膚 - 闖入者 - 水中都市 - R62号の発明 - 飢餓同盟 - 奴隷狩 - 盲腸 - 棒 - けものたちは故郷をめざす - 夢の兵士 - 鉛の卵 - 第四間氷期 - 使者 - 透視図法 - 石の眼 - チチンデラ ヤパナ - 無関係な死 - 砂の女 - 他人の顔 - 榎本武揚 - 時の崖 - 終りし道の標べに - カーブの向う - 人間そっくり - 燃えつきた地図 - 箱男 - 密会 - ユープケッチャ - 方舟さくら丸 - カンガルー・ノート - 飛ぶ男

戯曲

制服 - どれい狩り - 快速船 - 幽霊はここにいる - おまえにも罪がある - 友達 - 榎本武揚 - 棒になった男 - 未必の故意 - 愛の眼鏡は色ガラス - 緑色のストッキング - ウエー 新どれい狩り

評論・随筆

東欧を行く ハンガリア問題の背景 - 猛獣の心に計算器の手を - 砂漠の思想 - 裁かれる記録 映画芸術論 - 内なる辺境 - 発想の周辺 - 手について - 反劇的人間 - 笑う月 - 都市への回路 - 死に急ぐ鯨たち

詩集

無名詩集

テレビ・ラジオドラマ

煉獄 - お化けが街にやって来た - お気に召すまま - 吼えろ! - 虫は死ね - 審判 - こんばんは21世紀 - 目撃者

映画

おとし穴 - 砂の女 - 燃えつきた地図 - 友達

関連項目

安部真知 – 安部公房スタジオ

関連カテゴリ

安部公房 - 小説 - 戯曲 - 原作映画作品