文部省唱歌

尋常小学読本唱歌の教科書 1910年明治43年)

文部省唱歌(もんぶしょうしょうか)とは、明治から昭和にかけて文部省(現・文部科学省)が編纂した[1]尋常小学校高等小学校国民学校及び学制改革後の小学校の唱歌、芸能科音楽の教科書に掲載された楽曲の総称である。但し、文部省が定めた正式名称ではない。

概要

1910年明治43年)の『尋常小学読本唱歌』から1944年昭和19年)[2]の『高等科音楽一』までの教科書に掲載された楽曲1910年代から尋常小学校で教えられた。なお、1900年代までの翻訳唱歌は「文部省唱歌」に含まれない。

『尋常小学読本唱歌』およびこれを学年別に振り分けた『尋常小学唱歌』に収録された唱歌(全120曲)は、全て日本人による新作であった。当時、文部省は作詞者・作曲者に高額な報酬を払い、名は一切出さずまた作者本人も口外しないという契約を交わした。「国」が作った歌であるということを強調したかったのだとも言われる[3]。そもそも合議制で編纂されたため、個人の著作物とするのは無理がある。時代の変化にともない、歌詞が変更されることも多かった。検定教科書の時代になって著作者を明らかにしなければならなくなったが、その作業が学問的に行われたことはなく、著作者が判明しても根拠が弱いものも少なくないため、個々の作詞・作曲者を出さず「文部省唱歌」とだけ表記している教科書・歌集もある。

唱歌の中には『ふじの山』、『故郷』、『春の小川』、『朧月夜』などのように、現代の日本においても広く愛唱されている曲も多い。

教科書

関連項目

関連書

  • 鷹野良宏『唱歌教材で辿る国民教育史 ハナハト世代からサイタサクラ育ちの憶えた歌』近代文芸社、2006年6月。ISBN 4823106903。 
  • 藍川由美『これでいいのか、にっぽんのうた』文藝春秋、1998年。ISBN 9784166600144。 

  1. ^ 江崎公子・澤崎眞彦『唱歌大事典』東京堂出版、2017年11月、15p頁。ISBN 978-4-490-108972。 
  2. ^ 江崎公子・澤崎眞彦『唱歌大事典』東京堂出版、2017年11月、343p頁。ISBN 978-4-490-10897-2。 
  3. ^ 團伊玖磨『日本人と西洋音楽』NHK人間大学テキスト、1997年

外部リンク

  • 言文一致運動による唱歌教育と文部省唱歌
  • 唱歌は「蝶々」から出発
  • 明治中期の唱歌科普及過程に関する文化社会学的一考察 - ウェイバックマシン(2012年1月11日アーカイブ分)
  • 明治期の唱歌を彩った西洋曲
  • 唱歌教育と童謡復興運動にみる初等科音楽教育への 提言についての一考察
  • 文部省唱歌の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
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  • MusicBrainzシリーズ